名入れのボールペンや万年筆は、記念品や贈答品には便利なアイテムです。文房清玩と言う言葉がありますが、古来から筆記用具は静謐で清らかな愛用品として愛されてきた歴史を持っており、大人の嗜みとして良い道具を持つことがステータスでした。だからこそ贈答品としての文房具には価値があり、記念品の習慣を含めて親しまれてきたのです。名入れのボールペンはそんな歴史を背景にして、成績優秀者や貢献や永続記念として、勤め先の企業から個人に贈られる習慣がありました。

現在では薄れてしまいましたが、そうした主従関係と敬愛の情を現わすアイテムが名入れボールペンや万年筆だったのです。かつては百貨店の目立つ場所に文房具売り場があり、世界の名だたる名品や逸品が所狭しと並べられており、いつか出世した暁にはその中の任意の一本を購入して愛でるのが憧れの対象でした。そして期せずして贈答品で頂き、愛用して修理しながら十年二十年愛用することが静物との付き合いだったのです。日本は長い間舶来品の高い国だったのは、現在の水準に比べて円安だったからに他なりません。

外国製の腕時計や万年筆、革靴を購入する時には月賦やボーナス払いで手に入れて、その分大切に使ったのです。今よりも家内手工業的な物作りの息吹が残っていた時代の高級品は、メンテナンスをすることで長く使えるだけの品質を持っておりました。かつて高級品だった文房具の需要は二極化しており、コンビニで百円で購入出来るボールペンを愛用する人が大半になっています。しかし良い物を長く大切に使う文化も、決してなくなりはしません。

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